
表情と音声を分析するAIを搭載し、いつでも本格的な面接の練習ができる面接対策専用アプリ『カチメン!』。株式会社シーエーシー(以下、CAC)の新規事業開発本部で開発され、2023年10月にリリースされると、順調にダウンロード数を伸ばし、就活生や転職希望者にとって不可欠なコンテンツになりつつある。
スタートは就活生や転職希望者に向けた、いわゆるBtoCのプロダクトだったが、リリースから1年後には広告サービスを開始し、現在は『カチメン!』を通じた人材紹介業を企画するなど、BtoBの分野でも可能性を広げ始めている。
『カチメン!』をさらに成長させるためには、BtoB、BtoCの両面で様々な施策を打ち、認知度を高めていかなければならない。その重責を担うプロダクトオーナーの丹治由佳、BtoB向けセールス担当の山口悠花、BtoC向け施策担当の東谷日色が、それぞれの立場から『カチメン!』の現在と未来を語った。
大学卒業後、IT企業でセールスの経験を積み、2011年に株式会社シーエーシーに入社。同社でも営業を務め、その後2017年、新設されたAI&ロボティクス部門のグループ長に任命され、様々な事業立ち上げに携わった。2021年から新規事業開発本部に所属、『カチメン!』のプロダクトオーナーとしてサービス開発、事業拡大をリードする。
>>新規事業開発本部 プロダクトオーナー 丹治由佳インタビュー 表情分析AIを活用したアプリで手軽に面接対策 就職&転職活動のマストアイテムへ
大学卒業後、証券会社に入社し、長崎や金沢で5年半にわたって営業経験を積んだ後、2023年10月にシーエーシーに入社。表情感情解析AI『Affdex』の営業を中心に行い、その後、2024年4月より『カチメン!』チームに参加。BtoB向けのセールスを担当している。
大学院卒業後の2024年4月、新卒でシーエーシーに入社。3ヵ月間の研修を経て、7月に新規事業開発本部に配属された。現在は『カチメン!』チームにてBtoC向けの施策を担当する。
――『カチメン!』の概要や機能について教えてください。
丹治 『カチメン!』は、CACが保有するAIの技術が実装されていて、面接の練習や対策ができるアプリです。2023年10月にiOS版をリリースし、2025年2月時点でおよそ2万ダウンロードされています。

Photo by 清瀬智行
――他の面接対策アプリやChatGPTなどの生成AIサービスを使っての面接対策と比較しての強み、メリットを教えてください。
丹治 表情筋の動きから表情を分析する『Affdex(アフデックス)』、音声から感情を読み解く『Empath(エンパス)』という自社の感情分析AIを搭載していますので、人に与える印象を客観視できて、自分で分析や改善をして面接に活かせるところです。
>>表情・感情認識AIが人間の表情を分析『Affdex』プロダクト紹介サイト
>>音声感情解析AI 『Empath』プロダクト紹介サイト
――開発段階でこだわった点、ローンチ後に改善させた点があれば教えてください。
丹治 動画を分析できる機能は他社のアプリではあまり入っていないと思うので、差別化要素としてプロダクトに搭載しました。
最近の新卒生の就職活動では、1分間の自己PR動画を自撮りして企業側に送り、それで選考することがあるんですね。『カチメン!』の動画分析機能を使うと、自撮りした動画を分析し、喋っているときの表情や声色から「好印象を与えられる動画になっています」「熱意が伝わる動画になっています」などと伝えてくれます。それを自分で確認・改善し、納得のいくものを企業に送るという使い方ができます。

左:仮想面接官との練習、中央:台本登録時の面接練習、右:面接の採点結果
ローンチ後の改善点としては、広告枠の追加ですね。『カチメン!』のユーザーさんはほぼ100%が求職者ということもあり、人材紹介などのエージェントから「広告を出させてほしい」という問い合せが2024年夏ごろから入るようになりました。それを受けて、同年秋に広告掲載機能を追加しました。
――身近な知人の中に『カチメン!』を活用していた方はいますか。
東谷 先日、ユーザーさんにアンケートを取り、その後のお電話で『カチメン!』を知ったきっかけを聞いたのですが、ネットで検索して見つけた、友人に紹介してもらった、などさまざまな方がいらっしゃいました。
私が就活していたとき、『カチメン!』はまだローンチされていなかったのですが、使える環境にあったとしたら、先ずは、模擬面接の機能を使って事前に読み込ませた台本をスラスラ読めるように練習して、それから表情の練習をするといった活用をしたと思います。
丹治 今年4月にCACに入社する人は使っている可能性はありますよね。面接のときに話題にできますし。4月以降、新入社員が入ってきたら聞いてみたいですね。
山口 私が転職活動をしていたときはMVP版があったので使いました。営業職なので表情には自信があったのですが、実際にやってみたらスコアがすごく低くて。自分ではできていると思っていたところができていなくて、それを客観視して改善できたのが良かったです。

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――マーケティング戦略で特に効果的だった施策があれば教えてください。
丹治 ローンチ直後には大学の学園祭に『カチメン!』ブースを出展させてもらい、大学生の皆さんにアプリを体験してもらいました。また、YouTuberさんとのコラボもしていて、『しゅんダイアリー就活チャンネル』という就活生への知名度が高いチャンネルの動画内で『カチメン!』を実際に使ってもらいました。これは大きな反響がありましたし、実際にその動画を見てインストールした、という声もありました。
>>しゅんダイアリー就活チャンネル 『カチメン!』紹介動画 【面接不安なら見て】1人でできる面接対策法
東谷 BtoCの施策としては、X(旧:ツイッター)で転職者向けの情報発信をしている『ホワイト@キャリアアップ』さんというインフルエンサーさんにPRの投稿をしていただきました。アップされて半日ぐらいで8,000人ぐらいに見ていただいているので、今後もこういった取り組みを続けていきたいと思います。

――『カチメン!』はBtoBへの展開もしているそうですね。
山口 先ほど紹介した広告枠の追加がまさにそうなのですが、せっかく求職者の方を支援しているのだから、企業の方にも働きかけ、『カチメン!』を通じて求職者と企業を繋げたいと考えています。

Photo by 清瀬智行
――BtoB展開においてターゲットとする業界や企業の特徴を教えてください。
山口 現状で広告を出していただいているのは人材紹介のエージェントさんですが、他の業界にも広げていきたいと思っています。就活生の必須アイテムであるスーツなどを扱う企業や、就活を終えたら卒業旅行に行ったり、運転免許を取ったりといったこともあると思うので、そういった大学生や求職者に繋がるサービスを提供している企業を念頭に置いています。
――企業向けに営業を進めるうえで、強みとして打ち出したいポイントを教えてください。
山口 いろいろなメディアに取り上げていただき、時間とともに登録者数が増えているところは強みだと思います。また、『カチメン!』のユーザーさんは就活に対する意欲が高く、自分の苦手な部分や弱点をしっかり理解し、それを克服したいと考えている方ばかりです。
そういった自己分析ができたり、自分を変えていこうと考え、実行に移せたりできる方は、社会に出ても活躍できると思っており、ユーザーさんの意識の高さも幅広い企業に訴求できると思います。
――企業側の活用法としては広告掲出のほかにどのような形が考えられるのでしょうか。
山口 たとえば、派遣会社など他社に駐在する機会が多い企業では、派遣される前に研修があるそうなので、その際のトレーニングに『カチメン!』をご活用いただけると思います。
丹治 社員を育成するためのツールとして使いたいというご相談も増えています。コミュニケーションやプレゼンテーションの能力向上には、模擬面接の練習機能やトレーニングモードを活用できます。ただし、質問内容や分析結果のアドバイスは就活面接とは異なりますので、対応できるようにするための準備を進めています。

模擬面接の結果をAIが瞬時に分析。専門家によるアドバイスも表示される
――今後の施策として考えていることはありますか。
丹治 次の戦略としては、『カチメン!』を通じた人材紹介業を考えています。『カチメン!』のユーザーさんはほぼ100%が求職者です。アプリを使った面接練習だけでなく、実際にお仕事の紹介までできるような形にしていきたいと考え、その準備をしています。
アプリと広告と人材紹介、いろいろな方法で、お仕事を探している方に最適な企業をマッチングできるといいな、と思っています。
――『カチメン!』のプロジェクトに関わるなかで、それぞれのキャリアや価値観に影響を与えた出来事はありますか。

山口 もともと営業職で、CACへの入社当初も営業担当という話だったのですが、新規事業開発本部ではいろいろな分野に携わっています。丹治さんが事業のために動いてくださるのですが、それがスムーズに進行するように、たとえば契約書や申込書の作成など、サービスを作り上げる部分でのサポートもしています。営業状況を先読みして動かないといけないですし、自分の営業方法も含め、やらなきゃいけないこと、できることがどんどん増えていって、すごく良い経験になっています。
東谷 私はそもそもシステムエンジニアとして入社したので、実際の業務がシステムエンジニアではないのが一番、大きな衝撃ですね。配属が決まる前は、システムの運用とか保守から始まって、徐々に扱うプロジェクトも大きくなって、というイメージをしていたんですが、今はそういった業務はやっていなくて。
丹治 マーケターだよね。
東谷 そうなんです。なので、キャリアを考え直すきっかけになっています。最初は「とんでもないところに来てしまった」と思っていたんですけど、CACの同年代の方があまりしないような経験を若いうちからさせてもらえているのはありがたいと思っています。
丹治 山口さんには営業面だけでなく、広告のサービスを始める際の契約書や申込書の作成など、サービスを作り上げていく部分でもサポートしてもらっています。また、東谷さんには今年に入ってからマーケティング全般をすべてお任せすると伝えています。特にユーザーさんと接点を持つ部分や、どうすればもっと認知や訴求ができるか、その具体的な企画を考えて実行してもらっていて、すごく助かってます。
私自身もどちらかというと営業職が長く、まさかここにきて新規事業をやるとは思っていなかったので、驚いている部分があります。山口さんも言っていましたけど、新規事業の立ち上げはやることが本当に幅広いです。
私はプロダクトオーナーという立場なので、企画、開発、マーケティング、営業とすべてに関わっているんですけど、開発は過去にほとんど携わったことがなかったので、開発メンバーの力を借りながらいっしょに作り上げてきています。
作ったら今度は売らなければならないですし、『カチメン!』事業の今後の計画作りなども含めて責任を持たないといけないので、非常に難しい仕事だと思いながら、どうすればうまくいくかを日々、試行錯誤しています。

――丹治さんからお二人に期待されていること、逆にお二人はリーダーとして丹治さんをどう見ているのか教えてください。
丹治 昨年は3人でいっしょに進める感じだったのですが、今年から東谷さんはBtoCのマーケティング、山口さんはBtoBの営業やサービス開発と明確に役割を分け、それぞれにKPIも設定しました。私ができる支援は何でもしますし、自分の領域を認識したうえで積極的に動いていただくことを期待しています。
山口 IT企業は男性社員が多く、入社前は自分のロールモデルになるような方がいらっしゃるのかな、という不安があったのですが、丹治さんは自分と同じ営業畑で、いつも明るく接してくださいますし、ご家庭との両立をされているところも自分の目指すべき姿です。いつかは頑張って越えたいなと思います。
丹治 女性は会社全体で3割ぐらい、事業開発本部では2割ぐらいで少ないんですが、たまたま『カチメン!』のチームに3人集まっているんですよね。
山口 だからすごくやりやすいですし、ミーティングも楽しいです。
丹治 キャピキャピしているよね(笑)。プライベートの話をしたり、旅行のお土産を渡し合ったり、和やかな雰囲気でやっています。
東谷 私は新卒だったので、どんな上司の下につくのかという不安があったのですが、めちゃめちゃ良い部署に配属されたと今は思っています。丹治さんも山口さんも、私が無理しすぎないようにいろいろフォローしてくださいますし、丹治さんは常に事業全体のことを考えてくださっているので、本当に頼りになります。
――3人の各視点から見て、『カチメン!』をさらに成長させるために強化したい部分を教えてください。
東谷 これからBtoBにも力を入れていくのはもちろんですが、マーケティングの立場から言うと、そもそもユーザーさんがいないとそれも成り立たないと思うので、より多くの方に『カチメン!』を使ってもらえるように、施策を考えていきたいと思っています。
山口 個人としては、丹治さんに比べると営業の経験も他社との繋がりも小さいので、そこはさらに強化したいと思っています。『カチメン!』のBtoB については、現在は、営業先のメインを人材紹介エージェントとして動いていますが、その他どういった企業がアプローチの対象となるのか明確に定まっていないという課題があります。ヒヤリングなどを重ねることで明確にしていき、今後の営業活動に活かしていきたいと思っています。
丹治 『カチメン!』のプロジェクトを立ち上げてから3年になり、投資回収のフェーズに入っており、今年はマネタイズを強く意識して活動しています。そのためにも、BtoC向けの認知を高めてダウンロード数を増やしたいですし、それがBtoBのお客さまを増やすことにも連動しますので、両方をバランス良くやりながら『カチメン!』を成長させていきたいです。

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