動画解析の仕組みとは? 導入するメリット・デメリットを解説
(画像=tippapatt/stock.adobe.com)

AIの発達によって、近年では動画解析の活用分野が広がっています。単に個人やモノを特定するだけではなく、倉庫の在庫管理や無人店舗の運営のサポートなど、企業活動を効率化させる取り組みも増えてきました。

活用分野はさらに広がると考えられますが、新しいビジネスを検討する前に基礎知識を身につけておく必要があります。本記事では動画解析の仕組みや事例、メリット・デメリットを解説します。

目次

  1. 動画解析とは
  2. 動画解析の仕組み
  3. 動画解析で使われる画像解析の種類
  4. 動画解析を基にした画像生成
  5. 動画解析を導入するメリット
  6. 動画解析を導入するデメリット
  7. 動画解析の6つの活用事例
  8. 動画解析を活かせるビジネス、施策を検討してみよう

動画解析とは

動画解析とは、映像データをコンピュータで処理・解析し、特定の被写体を認識または識別する技術です。「映像解析」とも呼ばれており、例えば外見の特徴から個人を特定したり、位置・行動を識別したりするシステムがあります。

近年では解析技術や映像の解像度が向上したことで、動画解析の精度が上がっています。リアルタイムの映像も解析できるようになったので、入退室や生産現場の管理など、業務効率化を目指す企業が導入するケースも増えてきました。

動画解析の仕組み

通常の動画解析では、取得した映像データを静止画の連続として扱います。静止画の解析を繰り返すことで、被写体の動きまで識別できる仕組みになっています。

静止画の解析(画像解析)は、機械学習ベースのAIを活用するケースが一般的です。システムに組み込まれたAIは、静止画に映ったものをカテゴリー別に分類したり、学習した規則性(特徴量)から被写体を検出したりする役割を担っています。

動画解析で使われる画像解析の種類

AIを活用した画像解析には、様々な種類があります。それぞれどのような処理が行われているのかを知ることで、動画解析の理解にもつながります。ここからは、動画解析で使われる画像解析の種類について解説します。

画像分類

画像分類とは、画像データに映っているものを認識し、特定のカテゴリーに分類するプロセスです。

例えば、果物が映っている画像では「りんご」や「バナナ」、人が被写体の場合は性別や年齢などでカテゴリー分けを行います。対象物を指定して、その数や位置、動きを解析することもできます。

なお、画像分類に使われる技術も、「物体検出」や「セグメンテーション」などに細分化されています。実際にどのような技術が活用されているのか、以下では代表的なものを紹介します。

・物体検出

物体検出では、事前に抽出したいものを定義することで、対象物の数や位置、種類を検出できます。例えば、人が映っている場合に年齢や性別を定義すると、「30代の男性が5人」「20代の女性が3人」のようなデータを出力できます。

建築物のひび割れを検知したり、倉庫内の在庫を数えたりなど、物体検出はすでに様々な分野で活用されています。

・セグメンテーション

セグメンテーションとは、検出・認識したい対象物の境界線をピクセル単位で抽出する技術です。動画解析にこのプロセスが加わると、対象物のみを切り取ったり、対象物と背景を分けたりすることが可能になります。

例えば、デスク上の重要書類のみを検出するシステムや、会議の動画からホワイトボードのみを抽出する仕組みなどがあります。

・文字認識

文字認識は、画像データから日本語などの文字を検出する技術です。「光学文字認識(OCR)」とも呼ばれており、前述のセグメンテーションと組み合わせると、画像内の文章をテキストデータなどに変換することも可能になります。

分かりやすい例としては、書類やホワイトボードに書かれた情報を抽出するシステムがあります。また、外国語の文章をリアルタイムで翻訳できるスマートフォンの翻訳アプリなどにも、文字認識の技術が活用されています。

・顔認識

顔認識は、顔の特徴点(パーツのレイアウトなど)から個人を認識する技術です。企業のオフィスなどでよく見られる、顔認証システムをイメージすると分かりやすいでしょう。一般的な顔認識では、特徴点の形や位置関係を割り出す技術として、前述のセグメンテーションも活用しています。

動画解析を基にした画像生成

画像生成とは、入力したデータやパラメータに基づいて、新たな画像データを出力する技術です。リアルタイムで撮影した映像などを動画解析し、それをもとに、新たな画像を生成するといったこともできます。

例えば、バーチャル試着を体験できるアプリでは、スマートフォンで撮影した動画から、試着後の姿を出力できます。店舗に足を運ばなくてもバーチャルで試着ができ、消費者の利便性向上や、製品の新しい宣伝方法として活用されています。

動画解析を導入するメリット

動画解析を導入すると、新たなビジネスモデル構築や、現在の業務の人手不足の軽減に役立つ可能性があります。ここからは、企業が動画解析を導入する3つのメリットを紹介します。

リソースの最適化を図れる

動画解析の技術を活用したシステムには、コストや労働時間などのリソースを削減する効果があります。

例えば、生産現場の在庫数を自動的にカウントすることによって、人による管理工数を減らせます。さらに、在庫の不足分を自動で計算・発注できるシステムと組み合わせることで、作業時間を短縮でき、人件費を削減できる可能性があります。

労働環境が改善される

心身への負担が大きい業務に動画解析を導入すると、労働環境を改善する効果が期待できます。

分かりやすい例としては、工場の製造ラインの検品作業が挙げられます。従来であれば目視での確認が必要でしたが、動画解析によって、人より高い精度で検品することも可能です。立ち作業や目を酷使する作業を削減できれば、結果として労働環境が改善されます。

作業精度が向上する

長時間同じ作業を人がこなす場合は、集中力のばらつきによってヒューマンエラーが起こりやすくなります。検品作業で不良品を見落としたり、在庫数や発注数を間違えたりなど、小さなミスが深刻なリスクにつながる恐れがあります。このようなヒューマンエラーが起こりやすい現場では、動画解析を導入するメリットがあると考えられます。

動画解析による検品や在庫数の確認機能を持つ機器は、人のように疲れを感じることがありません。常に同じ動作を繰り返してくれるため、長時間の単調な作業や、難しい作業でも一定の作業品質を保つことができます。

動画解析を導入するデメリット

動画解析を導入するには、高機能な機器が必要になることもあります。

簡易的なシステムであっても、映像を撮影するためのカメラや、データを処理するパソコンは必要です。複雑なシステムを構築する場合は、データ保存用のサーバー費用や独自AIの開発費用、安定して運用するためのメンテナンス費用も必要になるでしょう。

また、AIも不具合や検出ミスを起こすため、全ての作業を任せることはできません。作業の精度を高めるには、目視によるチェックやメンテナンスも必要で、人の介在が全く無くなるわけではありません。

そのため、システムの導入前に長期視点で費用対効果を検証することが重要です。導入した場合にかかるコストとコスト削減効果、導入しなかった場合にそのままになるコストを比較しながら、慎重に計画を立てましょう。

動画解析の6つの活用事例

動画解析はすでに実用化されており、現在でも多分野での活用が進んでいます。以下で動画解析の活用事例をまとめました。新しいビジネスモデルの構築や、生産性を向上させる施策などを考える際の参考にしてみましょう。

養殖魚の資産価値を算定

本サイトを運営する株式会社シーエーシーは、映像から生けす内の養殖魚の時価を算出できる「魚体鑑定システム(仮称)」を開発しています。

本システムは画像認識AIを搭載しており、水中カメラで撮影した生けす内の映像データから養殖魚の体重データを推定します。このデータと尾数、キロ単価を掛け合わせることで、生けす内の養殖魚の時価を算出する仕組みになっています。

最新技術の研究開発を行なっているR&D本部とは

すでに実証実験を行っており、小型から中型の養殖魚については、対象個体に触れることなく体重を推定できます。スマートフォンから養殖魚の様子を確認できる機能もあるため、様々な形態で水産業に活用できる可能性があります。

最新技術の研究開発を行なっているR&D本部とは

参考:シーエーシー「画像認識AIの活用により養殖魚の体重を推定・データ化して資産価値を算定するシステムのMVP版を提供開始

工場の製造ラインの検品

製造ラインにおける検品は、動画解析の代表的な事例です。製品の外観から破損や歪みなどの不具合をAIが自動で検出してくれます。

加工食品を製造するキユーピー株式会社は、カット野菜を自動で検査するシステムを導入しています。こちらは破損などの不具合ではなく、AIに良品を学習させる仕組みを採用しており、高精度な検品作業を実現しています。

参考:キユーピー「AIを活用した原料検査装置をグループに展開

倉庫管理や在庫管理の自動化

在庫管理システムと動画解析を組み合わせると、倉庫管理・在庫管理の大部分を自動化できる可能性があります。

例えば、倉庫で商品の入出荷を行う際の、人の手で行われている検品作業を自動化できます。在庫管理システムと組み合わせることで、入出荷されるものを動画から解析し、納品書や注文伝票と照合し、数量や品番が間違っていないかを確認できます。

その他の例としては、株式会社ファントムが開発した「Casper(キャスパー)」が挙げられます。Casperは小売業で多く使われており、棚に並んでいる在庫(商品)を映した映像データの状態変化を検知することができ在庫の売れ行きを確認したり、万引きのような不正行為を検知して防いだりする効果があります。

参考:ファントム「映像内の状態変化を検知して在庫管理や異常の早期発見

農作物の生育管理や予測

農業分野の動画解析では、生育管理システムや生産量予測システムなどの実用化が進められています。

例えば、株式会社オプティムが開発した「農作物収穫時期・収量予測システム」では、映像から農作物の熟度を解析しています。さらに、この解析データと天候や日照条件などの環境データを組み合わせることで収穫時期や収穫量を自動予測できるシステムを構築しています。

参考:オプティム「農作物収穫時期・収量予測システム特許について

自動車の運転支援

自動車分野では、ドライバーの認知・判断・操作をサポートし、安全を支援するシステムの搭載が進んでいます。衝突回避システム、車間距離制御システム、車線逸脱アラートシステムなどがあります。これらのシステムは自動車に搭載された複数のカメラとレーダーを利用し、他の自動車や歩行者、交通標識や車線など、ドライバーの安全な運転を支援するために必要なデータを収集・解析します。

店舗運営の無人化

動画解析を活用した無人店舗の実用化が始まっています。

例えば、ホームセンター大手の株式会社カインズは、2022年に会員限定の無人店舗「CAINZ Mobile Store」を開店しました。この店舗には、専用アプリのQRコードをかざすだけで、入店から支払いまでを完結できるシステムが導入されています。

他にも消費者の動線を分析したり、滞留時間を記録したりするなど、実店舗型のビジネスで動画解析は様々な活用が始まっています。

参考:カインズ「CAINZ Mobile Store

動画解析を活かせるビジネス、施策を検討してみよう

動画解析の技術はすでに多くの業界、企業で取り入れられています。導入した企業の中には、動画解析によって業務の効率化や自動化、生産性の向上、新しいビジネスモデルの構築を実現した事例も出てきています。上記で紹介した事例も参考にしつつ、みなさんの業務・会社・業界で、どのように動画解析を活かすことができるか、ぜひ、検討してみてください。